個人事業主にも税務調査は来る! でも、事前準備をしっかりしておけば怖くありません

税務調査は個人事業主に対しても行われます。「起業してから何年も経つけど、1度も税務調査が入ったことがない」というのは、たまたまで、今後いつ税務調査の対象になってもおかしくありません。「いずれは来るもの」と考えて、もし税務調査が決まったら、しっかり準備をして対応するようにしましょう。

目次

個人事業主が税務調査をうける確率は?

「個人事業主はどれくらいの確率で税務調査を受けているか?」

この疑問については、客観的な統計のデータがあるので、ある程度把握することができます。

少し古い資料になりますが、総務省統計局が行っている「平成26年経済センサス‐基礎調査(確報)」によると、個人事業主の数2,089,716

また、国税庁が発表している「平成26事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について」によると、個人の所得税・消費税に対して行われた税務調査の件数は67,774件になっています。

以上、2つのデータから個人事業主に税務調査が来る確率を計算すると、

 

個人事業主 会社(※参考)
事業所数 2,089,716 1,750,071
税務調査の件数 67,774件 95,000件
確率 3.24% 5.43%

個人事業主の3.24%が、税務調査を受けていることが分かりました。
100人中3人ですから、決して多くはありませんが、全く無いというわけではないことが分かると思います。

 

ただし、この3.24%は全体の平均の数値
すべての個人事業主が同じ確率で、税務調査を受ける訳でもありません。

税務調査には、事業の規模業種などによって、調査を受けやすい、受けにくいという違いがあります。

 

 

税務調査をうけやすいのは、どんな個人事業主か?

事業規模の大きさの影響が最も大きい

税務調査を受けやすいかどうかについて、最も大きく影響するのは事業規模。言い換えると、売上の大きさです。

税務調査の目的は、確定申告の内容が正しいかどうかを調査することにありますが、
その一方で、調査を行う調査官には、「間違いを指摘して少しでも多く税金を取りたい」と言う本音があります。

税金は、儲けが大きいほど多くなりますから、儲けの元になる売上が大きい事業者ほど、納めなければいけない税金の金額も多くなる傾向にあり、間違いを見つけた時に、取れる税金の額が大きくなる可能性が高いのです。

 

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このような事情で、事業規模(=売上)の大きい事業者が優先して調査対象に選ばれることになります。

 

業種による違い

業種によっても、調査を受けやすい、受けにくいの違いがあります。

国税庁は「平成26事務年度における所得税及び消費税調査等の状況」の中で、「事業所得を有する者の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種」を公開しているのですが、これを見ると、

税務調査によって、追加で納めた税金の額が多い業種が、ランキング形式で分かります

順位 業種 1件当たりの申告漏れ所得金額(万円) 1件当たりの追徴税額(万円) 申告漏れ割合 前年の順位
1 キャバレー 2,093 490 89.1 2
2 風俗業 1,979 474 83.2 1
3 バー 1,159 198 63.3 3
4 冷暖房設備工事 966 132 46.1 10
5 ダンプ運送 932 126 50.7
6 不動産代理仲介 915 229 29.5 19
7 特定貨物自動車運送 914 93 58.1 5
8 学習塾経営 895 161 37.3
9 スタンドバー 878 119 61.3 18
10 くず金卸売業 869 194 33.7 4

この結果は、追加で納めた税金の大きさによるランキングなので、税務調査の件数とは違いますが、先ほど説明した通り、調査官には、

 

「間違いを指摘して少しでも多く税金を取りたい

 

という本音がありますから、税務調査で税金が取りやすい業種を対象にするのは、合理的な判断と言えます。

ですので、追加で納めた税金が多い業種ほど、税務調査を受けやすいと言えるのです。

 

なお、ランキング上位の業種について、なぜ、追加で税金がとられやすいかというと、

・キャバレー、風俗業:
 現金商売でお金の支払の記録が残りにくく、簡単に売上を抜くことができる

・不動産代理仲介:
 1件あたりの仲介手数料が大きく、売上をごまかしたくなる誘惑が強い

・建設業:
 1件の工事に多数の下請け業者や、関連業者が関わるため、その中のいつくかの業者を使うことで儲けを操作しやすい

・IT関係:
 商品がアプリなどの形のないものが多く、商品の完成のタイミングや、
 制作に関わる人達が、どのように制作に関与しているのか、などの実態がつかみづらい

などの理由が挙げられます。

 

 

今後個人事業主への税務調査は増えるか?

ここまでで、個人事業主の税務調査の傾向を見てきましたが、
今後の、個人事業主への調査については、おそらく増えてくるだろうと考えられます。

それには2つ理由があります。

1つは、法制度の整備やITの発展によって、副業も含めて簡単に起業できるようになったのと引き替えに、十分な経理や税務の体制を整えないままに事業を行っている事業者が増える可能性があること。

もう1つは、クラウドや手頃な外注サービスによって、コストをかけずに多様なサービスを受けられるようになったことで、個人でもかなりの規模の事業(売上の大きな事業)を運営することが可能になってきたことがあります。

 

1つめのように、十分な経理や税務の体制を整えないままに事業を継続する事業者が増えてくると、どうしても確定申告の誤りが増えてくるので、「正しく申告して下さい」という”指導”の目的での税務調査が増えます。

また、2つめの個人事業でも事業規模が大きくなってくると、納める税金の額が増えてくるので、調査官としては誤りを見つけたときに取れる税金の額が大きくなることから、調査の対象に加えられる可能性が高くなり、結果的に税務調査の件数が増えます。

 

このような、個人事業主の経営環境や事業の実態を考慮すると、今後、個人事業主への調査も増えてくると考えられるのです。

 

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税務調査には準備が大事

税務調査が増えると言っても、何も怖がる必要はありません。

税務署は、確定申告の内容に誤りが無いかを確認するために調査に来るだけですから、自分が提出した確定申告の内容が正しいことを証明すれば大丈夫です。

そのためには、2つのポイントを抑えて準備をします。

 

税務調査でどこを見られるかのポイントを知っておく

まずは、税務調査でどこを見られるかをよく理解しておきましょう。

税務調査で主に見られるのは、売上、原価、在庫、の3点です。

特に、売上については丁寧に見ると考えておいて下さい。
税務調査では、

売上に漏れがないかどうか

その年の売上が翌年の売上になっていないか(期ずれ)

を中心に見られます。

 

原価(経費)については、高額な支払いプライベートでしか行かないような場所での宿泊費やレジャーへの支払などが含まれていないかなどについて見られます。

また、争点になりやすいのが家事按分
自宅を事務所として使っている個人事業主の方は、水道光熱費の支払などについて、仕事で使っているのか、プライベートで使っているのかの線引きをしなければいけませんが、それが、適切な割合で振り分けられているかを見ます。

 

在庫については、在庫の数量が正しいかどうか、在庫の金額が正しいかどうかについてみます。

 

証拠となる資料を用意して確認する

調査でどこを見られるかのポイントが分かったら、
後は、そのポイントを証明するための資料を準備して内容を確認します。

税務調査では、帳簿、請求書・領収書などの資料、通帳、など事業に関する資料を一通り揃えることになりますが、揃えて終わりではなく、その資料について、調査でよく見られるポイントに沿って自分で確認しておくのです。

たとえば、売上については、「売上の漏れがないかどうか」を重点的に見られますから、

・すべての請求書(控え)が揃っているかどうか

・通帳を確認して売上に対応する入金があるかどうか

・個人の銀行口座をチェックして、取引先からの入金がないかどうか
(個人口座への入金によって売上をワザと漏らしていないか)

などを確認して、売上の漏れがないことが分かった状態で調査を迎えれば、調査官に何を聞かれても問題なく対応することができます。

もし、これが、全ての資料について確認するということであれば、いくら時間があっても足りませんが、調査で見られやすいポイントを絞っていれば十分に間に合います。

売上以外の原価、在庫についても、同じようによく見られるポイントを絞って準備しておけば安心して調査をうけることができます。

 

税務調査は、どれだけ事前準備ができているかで、結果が変わってきますから、税務調査が決まったら、落ち着いてしっかりと準備をすることが大事です。

 

 

まとめ

個人事業主にも税務調査は来ます。
ポイントを絞った事前準備をしておけば、怖くはありませんので、いつ税務調査が決まっても、落ち着いて対処するようにしましょう。

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