経理は”会社の実態”を知るために絶対必要
会社で「経理」が必要になる最大の理由は「法律で決まっているから」です。
会社は会社法という法律に従って、経営しなければいけないのですが、会社法では、「ちゃんとした会計記録ができる体制を作って、正確な決算書を作って公表してね」という記載があります。
なので、すべての会社は経理をしなければいけないのですが、それでも、「法律上の義務だから仕方なくやる」というのは、ちょっともったいない。
経理って、会社の活動をお金の面から記録する仕組みですけど、この記録ってものすごく役に立つんですよ。
小学生の頃やった理科の実験を思い出してもらいたいんですが、目の前で起こっていることって、「メチャメチャ燃えてる」とか「ボコボコあわが出てきた」のような日記みたいな文章で記録したりしないですよね。
重さ、温度、体積といった数字によって、その変化を記録していたはずです。
そうすることによって、客観的に何が起こったかを把握できていました。
(”燃焼”の実験で、スチールウールの重さが変わるのが分かって、妙に納得した記憶が)
これ、会社に置き換えると、「会社の数字の変化によって、会社に何が起こっているかを把握する」ということになります。
つまり、会社の活動を数字で記録することによって、”会社の実態”が分かるということです。
「”会社の実態”が分かる」ということは、自分の会社が
「好調なのか不調なのか」
「大きくなっているのか、小さくなっているのか」
「お金は十分なのか不足しているのか」
といった今後の経営方針を決めるのに役立つ情報が、手に入るということ。
経理によって集計された数字は、法律で求められるだけでなく、”会社の実態”を知り経営に役立つ情報を得るためにも、不可欠なものといえます。
”会社の姿”を知るのに、1円、10円単位の正確性は必要なの?
経理の目的には、「会社法や税法などの法律による義務」と「”会社の実態”を知る」の2つがあることを見てきましたが、この目的を達成するのに、求められる”正確さ”ってどの程度なんでしょう。
法律では「会計のルール通りにやってね」と定められているだけなんですが、会計のルールでは、「全ての取引を漏らさずに、正確に記録してね」と書いてあって、記録と実物が一致しない場合(「会計ソフトの残高」と「手元にある現金」など)は、実物に合わせて記録を修正すればOK。
とにかく、最終的に実物(実態)に合うように記録できていればOKです。
そして、”会社の実態”を知るために必要な数字の正確性って、「1円10円単位まではいらないな」というのは何となく分かるのではないでしょうか。
もちろん、会社の規模によって求められる正確さは異なりますが、ご家庭の家計簿を考えても、レシートと現金の間に、100円、200円の差があったとして、「家計の実態が全然分からなくなった、どうしよう…」とはならないですよね?
費目(食費、通信費、服飾費など)ごとに、収入に対して、だいたいどの程度の支出があるかが分かれば、「スマホ使いすぎた!」とか「コミケに行く資金、来月で何とかなりそう」など(別に”コミケ”じゃなくても良いんですよ。旅行とか適当に考えてね)、
家計が上手くいっているかどうか、今後注意すべきポイントはどこか(「コミケ資金のために、この費目の支出は抑える」など)といった、実態を知ることで役に立つ情報を得ることは十分可能です。
(家計簿アプリもたくさん出ています)
とすると、「経理たるもの、1円の不正確さも見逃してはならない!」というのは、あまり意味がないというのが分かると思います。
「経理」には”不完全”が織り込まれてますよ
「経理」って、「正確性が命!」みたいなイメージがあるかもしれませんが、実際にはミスがあることを前提に作られた仕組みなんです。
経理でやる会計記録って、人が会計ソフトに入力してできあがりますから、入力ミスだって当然ありますし、
そのミスを防止する仕組みだって、究極には人同士のやる相互チェックだから、見落としだってあるんですよ。
それだけでなく、経理のベースになる会計のルールの方を考えても、将来の予測である”見積もり”がガンガン入ってるんです。
減価償却費だって、「この機械は、きっとこれだけの期間で使い切るだろう」という予測の下で、その年の金額を決めてますし、
貸倒引当金だって、「売掛金のうちこれくらいは、回収できなくなるかもね」という予測の下で、将来の費用を今年の費用として取り込んでいます。
確かにあてずっぽうでやっている訳ではないので、非合理とは言いませんが、それでも、正確性の観点から言うと、正確な処理とはとても言えません。
だって、実際に起こってもいないことを取り込んでるわけですからね。
つまり、「経理の仕組み」の面でも「会計のルールの面」でも、「1円までの正確性を求める!」というスタンスではなく、”不完全”を織り込んで仕組みやルールを作っているのです。
ある程度のミスや誤りを見込んだ上で、それでも、「重大なミスだけは見逃さないような仕組みにしてくれ」というのが、経理に求められているものだと言い換えることもできるでしょう。
なので、あまりに細かい誤りに拘ることは、「経理の仕組み」や「会計のルール」の観点からもあまり意味はないです、はい。
それでも「ピッタリ合わないと気持ち悪い」なら、ミスが起こりにくい仕組みを作ろう
とは言っても、本音では「経理たるもの1円のミスも…」という人もいるかもしれません。
「俺が新人のころはな、1円の違いでも夜中までかかって修正してたんじゃい!」という経験から、「ピッタリ合わないと気持ち悪い」体質になってしまっているのかも。
何となく気持ちは分かるのですが、それをやってしまうと、本人は良いのですが、同じ職場のアノ人は疲れきってしまうかもしれません。
「ミスがないように」心がけるのは大事ですが(というより当たり前にやりますよね)、それも行き過ぎると、1つの仕訳を入力するのに何度も何度も確認するようになって、時間がいくらあってもたりなくなります。
また、「ミスしちゃいけない」という気持ちが強くなると、神経がすり減っていって、心も体もヘトヘトになっていくんですよね。
そうすると、気持ちとは裏腹にミスも増えてしまうと言う、なんたる悪循環…。
ということで、経理の目的だけでなく、経理に関わる人達の健康を考えても、そこに拘りすぎるのはどうかなと。
もし、そこに拘るのであれば、ミスが起こりにくい仕組みを作ることに力を入れるべきでしょう。
手順や処理が複雑になればなるほどミスは増えていきます。それだけではなくて、チェックする方の手間も増えていくので、見逃しの確率も高まります。
ということで、ルールで認められる範囲で、できるだけシンプルな仕組みを作って、運営していくといいでしょう。
それでもミスは必ず起きますから、究極には…、全部自分一人でやるか、自分よりも「気持ち悪い」に敏感な人を雇うしかないですよ。
私が顧問を担当するお客様にも、そのような方針で経理の負担を軽くする方向性を提案します。
まとめ
”細かすぎる経理”は、あまり意味がないだけでなく人の幸せにもつながりません。
法律やルールで求められている範囲で、ミスが少なくなるシンプルな経理の仕組みを考える方が、効果的です。
おまけ
ケガが増えてきたので、ランのフォームの改造に着手。
体が硬すぎて涙出てくる…。