有価証券報告書の提出期限と期限延長のルール  

東芝の2014年度の決算日は、2015年3月31日。ですが、粉飾決算が明るみに出たことで、数値を確定させることができず、決算書を提出できていませんでした。今日8月31日、ようやく提出されるのですが、これは、法律で決まっている決算書提出までの期限を大幅に超えています。法律で決められている、決算書の提出期限のルールについて見ていきましょう。

目次

上場会社は1年に1度、有価証券報告書を提出

東証やJASDAQなどの証券取引所に株式を公開している会社は、1年に1度、金融庁に”有価証券報告書”を提出し、一般に公開しなければいけません。

 
”有価証券報告書”というと難しそうですが、一言で言うと、

 
会社の事業活動を報告する書類

 
のことです。

 
会社の事業活動の結果を、数字の面から報告するのが”決算書”ですから、有価証券報告書の中に、決算書も含まれています。

 
それ以外にも、設備投資の状況や経営上の課題、役員の状況など、会社に関するたくさんの情報が詰め込まれているのが、”有価証券報告書”です。

 

 
有価証券報告書を作って公開する目的は、会社の株を持っている株主や、これから株を買おうと考えている投資家に対して、

 
株の売買の判断材料になるように業績や今後の事業の見通しなどの情報を提供するため。

 
ですので、あまりにも遅いタイミングで情報が公開されても意味がありませんから、情報が適切なタイミングで公開されるように、有価証券報告書の(金融庁への)提出・公開の期限については、法律で定められています。

 

 

 

有価証券報告書は、事業年度末から3か月以内に提出

有価証券報告書についてのルールは、金融商品取引法という法律で定められています。

 
提出期限についても、金融商品取引法(24条第一項)に記載があって、

 

 
”内閣府令で定める事項を記載した報告書(以下「有価証券報告書」という。)を、 
内国会社にあつては、当該事業年度経過後三月以内に、 〜中略〜  内閣総理大臣に提出しなければならない”

 

 

とされています。

 
ご存じの通り、会社では決算日が決められていますから、3月決算(決算日3月31日)の会社で言うと、

 

スクリーンショット 2015 08 31 15 19 33

 
事業年度が終わる3月よりあとの、3ヶ月4月,5月,6月以内が期限になります。

 
なお、先述の通り提出先は”内閣総理大臣”になっていますが、金融商品取引法の中で、その権限が金融庁に委譲できることになっているので、一般には、「金融庁へ提出する」と言われることが多いです。

 
また、有価証券報告書の提出は、電子データで「EDINET」という金融庁が管轄するサイトにアップロードする方法で行います。

 

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(出典:EDINET 提出者届出画面  この画面に必要な情報を入力して、データをアップロードします)

 
EDINETは有価証券報告書などの、公開が義務づけられた書類をまとめて公開するサイトですので、

 

スクリーンショット 2015 08 31 15 46 20 
 (出典:EDINET 閲覧用画面  この画面から検索して、閲覧したい書類を呼び出します)

 
EDINETを介して金融庁に有価証券報告書を提出すると言うことは、同時に、一般に公開することも意味しています。

 

 

 

3ヶ月以内に提出できない場合は、延長を申請

このように、有価証券報告書は決算日後、3ヶ月以内に提出しなければいけないのですが、今回の東芝のケースのように、それができない場合があります。

 
先ほど触れた金融商品取引法の提出期限についての記述(24条第一項)には、省略した箇所があって、

 

 
”内閣府令で定める事項を記載した報告書(以下「有価証券報告書」という。)を、 
内国会社にあつては、当該事業年度経過後三月以内(やむを得ない理由により当該期間内に提出できないと認められる場合には、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ内閣総理大臣の承認を受けた期間内)に、 〜中略〜  内閣総理大臣に提出しなければならない”

 

 
とされていて、やむを得ないときは、期間の延長を申請して承認を受けることになっています。

 
実は、東芝もこの申請を行っています。 
プレスリリースでこのことを報告していて、

 

スクリーンショット 2015 08 31 16 03 28

 
具体的に承認を受けた期間も、

 

スクリーンショット 2015 08 31 16 03 46

 
このように報告しています。

 
ただし、申請すれば必ず延長できるかというと、そんなことはなくて、「やむを得ないとき」として認められるケースについて、「企業内容等開示ガイドライン」で例示しています。

 

 
1.
災害などで電力の供給が止まるなどの不可抗力によって、会社のシステムが動かせない

 
2.
民事再生法に基づく再生手続開始の申立てがあった

 
3.
過去に提出した有価証券報告書等に、重要な事項について虚偽の記載があったが、訂正が提出期限までに完了していない

 
4.
監査の最中に虚偽の記載が見つかって、監査終了までにさらに時間がかかる

 

 
このような場合が、「やむを得ないとき」に該当します。

 
これ以外のケースでは、延長の申請があっても承認されず、そのまま期限を守れないと、罰金や上場廃止(1ヶ月を越えて遅れる場合)などのペナルティが科されることになります。

 
なお、どれくらいの期間の延長が認められるかについては、明確な基準は決められていません。

 
これは、延長の理由となる出来事が、「いつ発生したか」や「その影響の大きさ」、さらに「問題解決のための能力」がその都度異なるため、

 
判断に余裕を持たせることで、現実に即した決定を行えるようにしたためと考えられます。

 
東芝の場合は、2ヶ月の延長を申請して承認されていますから、金融庁としても重大な案件として、認識しているということでしょう。

 

 

 

まとめ

株式を公開している会社の有価証券報告書の提出期限は、事業年度終了後3ヶ月以内です。 
ただし、やむを得ないときは、期限の延長を申請して承認を受けることで、期限を延長することができます。
 

おまけ

新しいbluetoothイヤフォンを買おうと思いましたが、かなりの高額でビックリ。 
別のにするか、そのまま決めるか、迷いますね。

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