平成28年度税制改正大綱のポイント解説 (法人税編)

平成28年度の税制改正大綱が発表されました。今回は法人税、法人住民税に関するポイントを見ていきます。

目次

「税制改正大綱」って、つまり何?

”税制改正大綱”は、「次の年度に税金の仕組みをどのように変えるか」を与党(現在は自民党と公明党ですね)が話し合ってまとめたものです。

実際には、各省庁から寄せられた要望(「新しくこんな制度を作って欲しい」「この税金の税率を上げて欲しい」など)をたたき台にして、与党が中身を審議して内容を決めていきます。

ここでまとめられた内容は”案”に過ぎないので、情勢の変化等によって、実現しなかったり、形を変えたりすることもありますが、概ねこの内容通りに次の年度の税金の仕組みは変わっていくので、多くの人が注目しています。

税制改正大綱は誰でも見ることができますので自民党のHPで公開されています)、1度どんなものか見てみるのもいいでしょう。

かなり分量が多いので、今回は法人税と法人住民税に関わる部分のポイントを説明します。

 

 

法人税率の引き下げ(減税)

法人税で最も大きいのは、税率の引き下げです。

具体的には、
・現在:23.9%

・平成28年4月1日以降に開始する事業年度:23.4%

・平成30年4月1日以降に開始する事業年度:23.2%

このように変わります。

中小法人(資本金が1億円以下の会社)については、所得(利益)の800万円までは15%(租税特別措置によるものです)、800万円を越える部分は上記の通りになります。

ただし、この「800万円までは15%」は平成30年3月までで、それ以降については今後検討されることになっています。

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法人住民税の税率引き下げ&地方法人税の税率引き上げ

会社は、会社がある自治体のサービス(県の道路を使うなど)を受けながらビジネスを行っているため、自治体に対しても税金を支払っています。

そのなかの一つが法人住民税です。

法人住民税は、
会社の支払う法人税税率をかけて計算する「法人税割」と
会社の資本金の額などを基準にして計算する「均等割」を
合計した金額を支払うことになっています。

なので、「法人税の支払いが多い会社」「資本金の額が大きい会社」、
つまり、規模の大きな会社が多くある都道府県に、より多くの法人住民税が集まることになります。

ですが、規模の大きな会社は首都圏、関西圏、中京圏に集中していますから、
首都圏、関西圏、中京圏の自治体と、それ以外の地域の自治体で、法人住民税の差が大きく広がることになります。

そこで、法人住民税を引き下げて、引き下げた分を国の税金として集め
集めた税金を、法人住民税の少ない自治体に分配することになりました。

この「国で集める税金」が、地方法人税です。

 

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今回の税制改正大綱では、「地方法人税」の税率が上がるのですが、
それを補うように「法人住民税」の税率が下がるので、増税になる訳ではありません。

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具体的には次のように変更されます。

 

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事業税の税率引き下げ&外形標準課税の拡大

法人住民税と同様に、会社が自治体から受けているサービスに対して支払う税金として事業税があります。

事業税は、

付加価値割:会社が生み出した付加価値税率をかけて計算

資本割:会社の資本金の額に対して税率をかけて計算

所得割:会社の利益(所得)に対して税率をかけて計算

の3つを合計した金額を支払うことになっています。

 

今回の税制改正大綱では、付加価値割資本割の税率を引き上げる代わりに、所得割の税率を引き下げることになりました。

付加価値割と資本割は、会社が黒字かどうかとは関係なく支払わなければいけない税金なので、税率が上がるとその分税収は上がることになりますが、

所得割の方は、黒字でなければ支払う必要がないので、税率の引き下げは、黒字を出している会社にとってのみ減税と言うことになります。

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欠損金の繰越控除の見直し(増税)

欠損金の繰越控除の限度額引き下げられます。

「欠損金の繰越控除制度」は、過去に発生した赤字を、将来の黒字と相殺して、相殺後の利益法人税の対象となる利益(所得)にできるという制度です。

 

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上の例では、黒字の全額を過去の赤字と相殺していますが、
税制改正大綱では、

相殺できる黒字の額小さくする

・赤字を繰り越せる期間長くする

ように変更されることになっています。
ただし、中小法人においては大法人よりも条件が緩やかになっています。
具体的には次の表の通りです。

 

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建物付属設備、構築物の減価償却方法が定額法に統一

減価償却は、会社が持っている資産について、
資産の実態(事業で利用することによって、価値が少しずつ失われていく)
に合わせるように、少しずつ費用にしていく方法です。

たとえば、会社で使っているトラックなどを考えていただきたいのですが、
250万円で買ったとして、そのトラックは何年もの間使っていきますよね。

と言うことは、最初250万円だったトラックの価値は、
使い終わるまでの長い期間に渡って、少しずつ価値をなくしていくと考える事ができます。

とすると、買った時に全て費用にするのは、車の価値が少しずつ失われていく実際の姿には合っていないことになります。

車の本当の姿を現すようにするためには、少しずつ資産の価値を減らすように、費用にしていくべきです。

このように、会社の事業で資産を利用することによって、少しずつ価値を失っていく資産の実態に合わせるように、費用にしていくことを減価償却といいます。

 

今回の税制改正大綱では、平成28年4月1日以後に取得する「建物付属設備(エレベーター、・自動ドアなど)「構築物(塀、駐車場の舗装など)」の減価償却方法を、定額法のみにすることになりました。

従来は、定率法も認めていましたが、建物が定額法しか認められていないのに合わせて、「建物付属設備」「構築物」も定額法にしたようです。

定額法は、「時間の経過とともに価値を失っていく資産」の実態を表すのに適した減価償却方法と考えられますので、より実態に合わせた減価償却方法を選ばせる意図があります。

 

従業員が1000人を越える会社では、10万円以上30万円未満の資産を一括で経費にできなくなる

中小企業では、10万円以上30万円未満の資産なら一括で経費にすることができたのですが、

資本金が1億円以下の会社でも、従業員が1000人を越える会社の場合は、それができなくなります。

従業員が1000人を越える会社は、大法人と同様に、

・10万円未満なら全額を一括で償却
・20万円未満なら3年で均等償却(一括償却資産)
・20万円以上なら減価償却で耐用年数に応じて償却

このように分けて処理する必要があります。

 

 

まとめ

税制改正大綱の法人税部分は、法人税率の引き下げが大きなポイント。
それ以外の箇所でも細かく変化しています。

 

おまけ

税制改正大綱の消費税の軽減税率についてはこちらの記事で、
 

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