会社の節税の手段として、保険を利用することはよくあります。ただ、これがどういう仕組みでトクになるかはちょっと分かりにくいかもしれません。簡単な例を使って、保険が会社のお金にどのような効果をもたらすかを確認してみましょう。
「保険料の支払いが経費になる…」だけじゃない
保険による効果として最も分かりやすいのが、保険料を経費にすることで節税につながること。
会社が支払わなければいけない法人税額は、その年の会社の利益に税率をかけて決まりますが、利益は売上から経費を引いて計算されるので、経費の額が増えれば増えるほど、支払う法人税の額は小さくなります。
会社が黒字になった時に、何もしないで税金でもっていかれるよりは、
保険料を支払って経費にすることで法人税の支払い額を小さくするとともに、
将来に大きな保障を(保険のプランによって違いますが、死亡保障や医療保障など)を得ることができる方が良い
と判断して、保険に加入する訳です。
最近は経費として認められる範囲が小さくなっていて、それまで保険料の全額が経費になっていたものが2分の1しか認められないものが多くなっていて、
節税の効果としては以前ほどではありませんが、それでも、一定の節税効果はあります。
ただ、保険加入は「経費を増やすことによって、法人税の支払い額を減らす」という節税以外の効果もあります。
それは、保険料の支払を会社が行うことで、社長個人が支払う場合よりも、出ていくお金を少なくすることができること。
どのような違いがあるか、具体的に見てみることにしましょう。
社長個人で保険料を支払うのと、会社で払うのとでは
出ていくお金が変わってくる
仮に、毎月の保険料が20万円の保険に入るとします。
(保障内容と加入するタイミング、払込期間によって、より高額な保険料が必要なものもあります)
この20万円の保険料を、社長個人の報酬から支払う場合、
会社から報酬を受け取る際に、所得税や社会保険料を差し引いた後の手取りから支払うことになります。
ところが、この保険料を会社で払うことにすれば、保険料の分だけ使えるお金が増えることになるのです。
社長を被保険者(保険の対象になる人)にした保険を会社に支払ってもらうことは、節税ができるだけでなく、
社長個人の資産形成にも効果があるということになります。
いいことばかりのように見える会社による保険料の支払いですが、1つ問題があります。
それは、会社が保険料を支払うことになると、社長に「もしも…」のことがあった時に、受け取る保険金が会社に入ること。
保険金が入ってくるのは問題ないのですが、支払った保険料との差額は、利益になるので、その分法人税が増えてしまい、
せっかく保険料を経費にして節税してものがムダになってしまうのです。
この点については別の観点からの対策で対応が必要です。
会社名義の保険を、社長名義に書き換える
医療保険やがん保険の保険金は、会社が受け取ると差益があれば利益として法人税の対象になりますが、個人であれば非課税です。
なので、理想は、会社に保険料を払ってもらい、受取を社長個人にするパターン。
タイミングを見極める必要がありますが、最初、会社名義で保険に加入して会社に保険料を支払ってもらい、保険料の支払いが終わったら、契約者と受取人の名義を、会社から社長に書き換えることでこれが可能になります。
名義の書き換えには、解約返戻金(その時点で解約した場合に戻ってくるお金のこと)相当額を支払わなければいけませんが、上手に退職金の一部として保険を組み込むことで、現金を払い込むことなく、移転することもできます。
簡単な例をみてきましたが、保険を効果的に使うためには、様々な要素を検討する必要があり、複雑にならざるをえません。
それでも、保険が会社や社長の資産に与えるインパクトは大きいので、毛嫌いせずに上手に取り入れるようにしましょう。
まとめ
社長の保険を会社で支払うと、会社の節税になるだけでなく、社長の資産形成にも有効です。
ただし、保険を効果的に使うには、保険料、保障内容、満期までの期間、加入・解約のタイミング、解約返戻金の額などの条件を検討して、ただしく選択する必要があります。
おまけ
会社の規模が小さいくてもリスクヘッジは重要です。
会社が小さい分、社長の存在は非常に大きいので、社長が抜けた場合のリスクを一定の範囲でカバーできるようにしておく必要があります。