会社で経理の仕事を担当すると、簿記の教科書で習った会計処理と、実際の会計処理が違っていて、「どうしてこれが認められるの?」と疑問に思うケースがたくさん出てきます。今回は、水道光熱費について会計理論と実務での処理の違いを確認していきます。
水道光熱費の実務での処理
水道光熱費は、請求書が到着した時点で記帳する会社が多いです。
経費として記録するためには、支払い先、内容、金額、期日、が正しく記録された、根拠となる証憑が必要です。
取引先からの請求書は、その要件を満たす証憑ですから、請求書に基づいて、経費として記録するのは何も問題は内容に思われます。
会計理論で正しいとされる水道光熱費の処理
ここで、会計のルールについて確認しておきましょう。
会計のルールでは、経費は発生したときに記録することが求められています。
「発生」というと難しいですが、水道光熱費について言えば、水、電気、ガスを「使った時」が、「発生」を意味します。
会計の重要な目的の一つが、利益を正しく計算すること。
利益は、売上と、売上を上げるために使った経費とを同じタイミングで記録することで、正しく計算することができますから、
「発生」したタイミングで、売上と経費を記録することにして、正しい利益の計算を可能にしているのです。
ここでもう一度、水道光熱費の実務での処理を思い出して下さい。
先ほど、「実務では、請求書が届いたタイミングで水道光熱費を記録する会社が多い」と説明しました。
この点について、会計理論との間で問題はないのでしょうか。
水道光熱費の請求書の内容を足がかりに確かめてみます。
実務での処理の問題点
水道、電気、ガスの料金は、次のようなスケジュールで請求が行われます。
厳密に言うと、前回の測定日から、今回の測定日までの期間で、使用量を測定するので、測定のタイミングによっては、月の中頃に請求書が届くということも、考えられます。
また、水道については検針が2ヶ月に1度なので、請求書が届かない月もあり、決算の月に請求書が届かなければ、1月分の記録が漏れてしまうことになります。
いずれにしても、請求書を受け取るのは実際に使った月の翌月。
請求書が到着したタイミングで記録してしまうと、その月に記録されるのは、前月以前に使用した水道光熱費ということになるのです。
これでは、会計理論で求められている、「発生した時(=使った時)に経費を記録する」というルールに反してしまうことになります。
では、会計理論に合わない実務での処理が、なぜ認められているのでしょうか。
そこには、別のルールの存在があります。
「重要性の原則」で簡便な処理が認められます
実務の処理(請求書が到着した時点で処理する方法)が認められる根拠の一つに、「重要性の原則」があります。
重要性の原則は、金額が大きくなく、また、「経営上不可欠な経費」といった、重要な意味を持っていない科目については、簡便な処理を認めるというルールです。
経理のコストがかかりすぎて、会社の利益を圧迫してしまっては、利益を追求するという会社の目的が達成できなくなってしまうことから、理論と会社の目的とのバランスをとるために、この考え方が生まれました。
ただし、重要性が高い(=金額が大きいor科目の重要性が高い)場合は、簡便な処理は認められません。
たとえば、水道光熱費でも、大規模な製造業では、大量に水や電気を使います。
そのような会社では、決算書における水道光熱費の金額が大きくなり、利益に与える影響も大きくなることから、「重要性の原則」を理由にした、簡便な処理(請求書到着時点で会計処理)は認められません。
水道局や電力会社に請求書の発行を早めてもらったり、実際にどれだけ使用したかを会社が自らで測定する、などの方法で、正確な金額を計算して、発生したタイミング(実際に使った月)で会計処理する必要があるのです。
まとめ
実務で採用されている会計処理には、会計理論に合わないものも含まれています。
そのような処理に出会ったら、「理論的にはどうするのが正しいか」をご自身で考えた上で、「どうしてその処理が認められているのか」を、詳しい経緯を知っている方に確認しておきましょう。
そのような小さなトレーニングが、実務での対応力を高めることになります。
おまけ
夏限定アイスの情報がちらほら入ってきました。
少し先になりますが、7月の初旬には手に入れる予定です。