取引先との商談で会食の席を設けようとするとき、「1人あたり5,000円以下で」と言われることがあると思います。「何だよケチくさいなぁ」と思われるかもしれませんが、これには”交際費”のルールが影響しています。
5,000円を超える飲食代は、半分しか経費にならない
取引先との接待などで会社が支払う飲食代は、法人税法では「交際費」に分類されます。
法人税の世界では、「交際費」は厄介者扱いされてます。
30年前のバブル時代、「経費で落とせる」の一言で、接待の名目で会社のお金が湯水のごとく使われていたのですが(←交際費ですね)、
景気が悪くなるにつれて「他人(会社)の金でそんな良い思いしていいの?」と社会的に問題視されるようになりまして(そりゃ当たり前だ)、「交際費=ムダ=悪=厄介者」というムードが強くなったんですよね。
そこで「じゃ、経費でなくなればムダ使いしなくなるんじゃないの?」と言うことで、「交際費」は経費でなくなりました(かなり大胆)。
この方針転換のインパクトは大きくて、接待に使われるお金は急激に減少。
当初の目的を達成できて良かったとも言えますが、困る人もいるわけで、それまで接待などで利用されていた飲食店の売上が大きく落ち込んで、こちらも深刻な事態に陥ります。
一方で、会社でも必要以上に「交際費」が抑制されてしまったところがあり、正当な接待ができないことで営業活動が阻害され、会社の成長を鈍らせてしまう原因にもなってきました。
そこで、「経費として認めない」というのはやり過ぎたので、少しは経費として認めましょうという流れに変わって、現在はこんな形に落ち着いています。
5,000円超なら半分、5,000円以下なら全額経費になると言うことですね。
「ここまでなら商談に必要な範囲の接待として認められるでしょう」という上限が5,000円ということで、それ以上の額となると、サービスの中身が…(以下自粛)。
と言うことで、会社で接待の費用を精算するとき「1人5,000円以下しかダメです」と言われるのは、
「全額が経費になる交際費の上限が5,000円」と言う理由があるからなのでした。
「経費」として認められれば、会社からお金が返ってくるわけですが、
では、会社にとっても「経費」にすることで、同じ金額だけお金が返ってくることになるのでしょうか。
経費の分だけ会社のお金が増えるわけではない
「経費になる」と会社のお金も同じだけ増えるかというと、そうではありません。
会社にとって経費にできるかどうかで、お金に影響が出るのは法人税の支払いのところ。
法人税の支払い額は、次のような計算で決まります。
この式を見れば分かるように、経費が増えるほど法人税の支払い額は減りますが、
経費と同じ額だけ、法人税の支払い額が減るわけではありません。
経費で減る法人税の額は、
「経費×税率」分だけです。
つまり、「経費で落ちる」というのは、会社にとっては、その一部が法人税の減額分として節約できると言うに過ぎず、お金が出ていくことには変わりは無いと言うことです。
ですので、会社のお金を使う時には、支払ったお金以上のリターンがあるかを考えないと、本当の意味での「経費」(=売上、利益を増やすための支出)にはなりません。
「経費で落ちる」という言葉に惑わされず、
「会社の売上、利益を増やすのに必要な支出かどうか」
の視点でお金を使うことで、ムダな支出を減らし、会社のお金を守るようにしましょう。
まとめ
接待の費用が「1人あたり5,000円以下」に設定されるのは、
法人税法で、「1人あたり5,000円」が交際費の全額を経費として認める、上限にあたるからです。
ただし、経費として認められるとしても会社からお金が出ていくことに変わりは無いので、「売上や利益を増やす支出かどうか」を考えて、会社のお金を使うように心がけましょう。
おまけ
バブル期の交際費の使い方って、実際どうだったんでしょうね。
長距離のタクシー代とかでも、バンバン会社のお金で出してたみたいですから、
毎月の金額や処理するレシートや領収書の量も、今とは比べものにならない多さだったはず。