2015年10月から配布が始まったマイナンバーの「通知カード」。なかなか手元に届かず「どうなってるの?」と思っていましたが、ようやく受け取ることができました。人によってはこの「通知カード」を受け取らないこともあるようです。
マイナンバーを受け取らなくても、罰則はない
マイナンバー制度は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」という法律に基づいて運営されている制度です。
法律があると言うことはそれに違反すると、相応の罰則が科されるのが通常ですが、「マイナンバーを受け取らない」ことについてなんらかのルールや罰則があるのでしょうか。
結論から言うと、
「マイナンバーを受け取らない」ことによる罰則はありません。
なので、マイナンバーの「通知カード」を受け取らないからと言って、
懲役を科されたり、罰金を支払ったりすることはないのです。
マイナンバーの罰則の主な対象は、
”集める”or”管理する”側
マイナンバー制度で決められている罰則は、主に、マイナンバーを集めたり、集めたマイナンバーを管理する側を対象にして定められています。
と言うのも、マイナンバー制度を導入するにあたって最も大きなハードルは、
「マイナンバーが漏れたときに、マイナンバーに紐付けされている個人情報まで奪われてしまうのではないか」
という、私たちの個人情報流出への不安。
マイナンバー導入に際しては、この不安を和らげるようなルールが必要と言うことで、マイナンバーを大量に扱うことになる会社やその担当者に対して、取り扱いについての厳格な義務を定め、義務を守れない場合の罰則を厳しくするように、法律が作られていきました。
なので、マイナンバーを提供する側(私たち一般の国民のことです)の義務や、違反したときの罰則については、
今のところ定められていないのです。
(もちろん、脅したり、だましたりして、他人のマイナンバーを聞き出すような行為には、罰則があります。
罰則については、こちらの記事でも扱っています。)
マイナンバー受取り拒否のデメリット
マイナンバーの受取りを拒否することで、ペナルティを受けることがないことは分かりましたが、デメリットはいくつかあります。
「個人番号カード」が作れない
今、私たちに送られてきているマイナンバーのカードは「通知カード」と言って、「あなたのマイナンバーは、この番号です」というお知らせのためのカードです。
なので、「自分のマイナンバーを知ること」以外の役割はありません。
マイナンバーで得られるメリットは、後から交付されることになる「個人番号カード」によるものです。
「個人番号カード」は「通知カード」とは違って、勝手に送られてくるものではなく、「通知カード」を受け取った人が、自分で交付申請しなければ受け取ることができないのです。
(ただし、未成年などは代理人が申請します)
「個人番号カード」の交付申請には、マイナンバーが不可欠。
従って、「通知カード」の受取を拒否すると、住民票など別の方法でマイナンバーを確認しない限り、「個人番号カード」の交付を受けることができません。
(「通知カード」に同封されている「個人番号カード」交付交付申請書。自分で申請しなければ「個人番号カード」の交付は受けられません。)
(「個人番号カード」についてはこちらの記事でも扱っています)
ネットからの行政手続き(確定申告=e-taxなど)ができない
確定申告などの行政手続をネットから行う場合は、「個人番号カード」が必要になりますが、マイナンバーを受け取っていないと「個人番号カード」が交付されないので利用できません。
マイナンバー制度の大きな目的の一つは、行政事務の効率化。
具体的には、ネットからの申込みで各種行政手続を完結できるようにすることで、今まで人の手で行われていた業務を削減するというもの。
ただ、ネットからの手続には”なりすまし”のリスクがあるため、本人確認を厳格に行う必要がありますが、それを「個人番号カード」で行うのです。
ネット経由で行政手続を済ませようとすると、「個人番号カード」が必要になるため、マイナンバーが分かっていないと利用することができません。
住民票等の各種証明書をコンビニから取得できない
住民票等の各種証明書は、コンビニで受取ができるようになっています(自治体により異なります)。
その際、本人確認書類として必要になるのが「個人番号カード」。
マイナンバーを受取拒否して「個人番号カード」を作っていないと、コンビニからの受取ができません。
現在、明確にされている範囲で考えられるデメリットはこれくらいでしょうか。
思ったほど大きなデメリットはなさそうですね。
デメリットはあまりないけれど…
マイナンバー受取拒否の「罰則」と「デメリット」ついて見てきましたが、
中身を見てみると、受取拒否によってそれほど困ることはなさそうです。
マイナンバーの主なメリットが”個人の利便性”にではなく、”行政の事務処理の効率化”の方にあるので、それも当然です。
ただ、個人にデメリットがないからと言って、
・マイナンバーを受け取らず
・会社から求められても応じず
・自治体の手続でも使わない
という対応が肯定されるかと言うと、そうとは言えないでしょう。
個人情報流出のリスクや、管理型の社会への問題意識から、マイナンバー制度に対して警戒心を持つのは健全だと思いますが、一方で「行政事務の効率化」をなおざりにする訳にも行きません。
少ない人数で効率よく行政事務を進められるようにならなければ、そのデメリット(税金の支払いなど)は、私たち自身が被ることになりますから、その仕組みに参加して協力することも必要になるのではないでしょうか。
現在のところ、マイナンバーを知られることによって、直接、個人の財産が奪われるなどのリスクは考えられませんから、今後の成り行きには警戒しながらも、必要な範囲でマイナンバーを利用していくのが現実的な対応と言えるでしょう。
まとめ
マイナンバーの受取を拒否することによる罰則は、今のところありません。
ただ、”行政の事務処理の効率化”も重要なテーマですので、警戒はしながらも必要な範囲でマイナンバーを利用していくのが、現実的な対応といえるでしょう。
おまけ
マイナンバーについては「将来こんな大変なことが起こるかも」という憶測によって、必要以上に警戒感が高まっているように思います。
制度の今後の見通しを明らかにして、議論を深めるようにしないと、制度の浸透に時間がかかるかもしれません。