平成28年度税制改正大綱のポイント解説 (消費税 軽減税率編)

平成28年度税制改正大綱の確定版が公表されました。速報版で一部記載されていなかった消費税部分も補われていますので、ここでは消費税部分のメインにあたる軽減税率のポイントを解説します。

なお、法人税についてはこちらの記事で、

それ以外の項目についてはこちらの記事で扱っています。

軽減税率の導入

平成29年4月1日から、消費税の税率が10%に引き上げられることになっています。

その一方で、生活に深く関わる商品については、増税による日々の負担感が大きくなることから、特定の品目を対象に軽減税率を導入することになっています。

対象品目

軽減税率の対象になるのは、食品飲料新聞(週2回以上発行&定期購読分のみ)の3つです。

食品は、生鮮食料品に限らず加工品を含みますが、飲料については、酒類含みません

また、おまけ付きのお菓子や、ジュースがありますが、おまけの方がメインになっている場合は対象外。
価額が通常の商品と変わらず、お菓子やジュースの部分がメインになっている場合は対象になります。

 

税率

軽減税率は、6.42%で、地方消費税と合わせて8%です。

 

仕入税額控除の方式の変更

軽減税率の導入にともなって、仕入税額控除の方式が「請求書等保存方式」から「適格請求書等保存方式」へ変更されます。

この点については、次の章で詳しく説明します。

軽減税率については、この3点がポイント。
特に実務でポイントになるのは、「対象品目」と「仕入税額控除方式の変更」ですので、制度導入前にしっかり確認する必要があります。

 

 

「請求書等保存方式」から「適格請求書等保存方式」へ

軽減税率導入で、注目されるのが、「仕入税額控除方式の変更」で、「請求書等保存方式」から「適格請求書等保存方式」へ変更されます。

ネーミングはおおげさなので、ちょっと身構えてしまいそうになりますが、中身がわかれば「な〜んだ」と思われると思いますので、気楽に構えておいてください。

まず、消費税のどの部分の問題かを明らかにするために、簡単に消費税の仕組みをおさらいしながら、仕入税額控除について確認します。

 

仕入税額控除とは

消費税は、商品や製品を販売する時、価格に消費税分を上乗せした金額をお客さんに請求して、受け取った消費税分を国に納めることになっています。

 

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多くの会社では商品を仕入れたり、材料を仕入れて加工したものを、自社の商品・製品として販売していますから、売った「商品」や「製品の材料」の”仕入”の際には、消費税を支払ってもいるのです。

 

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なので、上の例で言うと、10,000円の商品の販売に対して、

商品を売った会社800円

仕入れ先の会社80円

の消費税を国に納めることになります。

ただ、消費税は「商品や製品を最終的に消費する人」が負担することになっていますので、このケースでは最終的に商品を消費するお客さんが支払った、10,000円に対する消費税、つまり、800円が国に納めるべき消費税の額です。

 

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とすると、このままの状態では、会社が仕入先に支払った80円分は払いすぎ
ということで、会社は仕入先に支払った80円差し引いて、消費税を納めることになります。

この、「消費税を納める時に、差し引く、仕入先に支払った消費税の部分」を、
仕入税額控除といいます。

 

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「仕入税額控除の方式」は何を指しているか

上の例で説明した通り、「仕入税額控除」は、大雑把に言うと、

 
仕入先に支払った消費税

と言うことになります。

ただ、商品や材料を買って消費税を支払えば、無条件に「仕入税額控除」になるかというと、そうではありません。

実際に取引が行われていて、仕入税額控除の金額が正しいことを証明する証拠が必要になります。
(何でも控除を認めていたら、必要な額まで支払われなくなりますからね)

そして、「仕入税額控除の証拠を何にするか」こそが「仕入税額控除の方式」を意味するのです。

では、具体的に何が変わるかというと、「仕入税額控除」の証拠には、
請求書帳簿が使われるので、

「仕入先が発行する請求書の様式
帳簿の記載内容

の2つが変わると言うことになります。
更に言うと、

請求書に記載しなければいけない事項が増える
帳簿に記載しなければいけない事項が増える

という点で「仕入税額控除の方式」が変更されます。

 

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「請求書等保存方式」と「適格請求書等保存方式」

では、具体的にどのような記載項目が増えるかを見ておきましょう。
まずは、請求書の方から。

現在の仕入税額控除の方式は、「請求書等保存方式」です。
「請求書等保存方式」の記載内容は次のようになっています。

取引先の社名

取引の期日

③商品の内容

④商品の金額

消費税額

社名

 

そして、軽減税率の導入と共に導入されるのが、「適格請求書等保存方式」。
「適格請求書等保存方式」は「請求書等保存方式」の項目に加えて、2つの項目が加わります。

①取引先の社名

②取引の期日

③商品の内容

軽減税率の対象となる商品の金額税率

通常の税率の対象となる商品の金額税率
 ※④と⑤を区分して表示

⑥消費税額

登録番号

⑧社名

 

の8項目。
違いをまとめると、

 

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このようになります。

 

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(出典:財務省HP 財務省のHPで請求書のサンプルが公開されていたので参考のために載せておきます。
左が現行の請求書、右が「適格請求書等保存方式」のモデルになっているイギリスの「インボイス方式」の請求書)

 

ポイントは、軽減税率の対象となる商品と、通常の税率の商品の両方を扱っている場合は、それを区分して表示することと、登録番号を記載することです。

さらに、この登録された会社は上記の記載事項を記載した請求書を発行する義務を負います。
(記載事項に漏れがあったり、請求書の発行をしなかったりすればペナルティが課されます)

 

適格請求書発行事業者登録制度

「適格請求書等保存方式」の記載事項で突然「登録番号」が出てきました。

これは、軽減税率導入に伴って新たに始まる「適格請求書発行事業者登録制度」によって記載が義務づけられるものです。

「適格請求書発行事業者登録制度」がどのような制度かというと、消費税を納める義務のある会社登録して、登録番号を付与するというもの。

 

もう一度、「仕入税額控除」の仕組みを思い出して欲しいのですが、
会社が、仕入先に支払った消費税を差し引くことができるのは、
仕入先に支払った消費税を、仕入先が国に納めるからでした。

 

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逆に言うと、仕入先が国に消費税を納めない場合は、
仕入税額控除認められないということになります。

なので、仕入税額控除を使いたい会社は、「仕入先消費税を納める義務のある会社かどうか」を確かめなければいけないのですが、いちいち問い合わせるのは面倒です。

そこで、「その会社が、消費税を納める義務があること」が簡単に分かるように、

対象となる会社を「適格請求書発行事業者」として登録し、登録番号を付与
登録した会社には、取引のつど登録番号を記載した請求書を発行することを義務づけます。

こうすることで、仕入税額控除の対象となる取引を行えば、仕入先から登録番号が記載された請求書が必ず届くようになります。

これが、「適格請求書発行事業者登録制度」です。

 

「適格請求書発行事業者」の対象となる会社は、登録が必要になりますが、登録申請は平成31 年4月1日からの予定ですので、しばらく先です。

 

「適格請求書等保存方式」と帳簿

「適格請求書等保存方式」によって帳簿の記載内容も変化します。

基本的には今まで帳簿で記載されてきた内容を記載すればOKなのですが、
1つだけ記載しなければいかない項目が増えます。それは、

軽減税率の対象となる取引の場合、

軽減税率の対象となる取引であること

を追加して記入します。

小さいな変化ですが、仕入税額控除には必要な条件ですので注意が必要です。

現在の記載内容と比較しておくと、

 

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このようになります。

 

「適格請求書等保存方式」が導入されるまでの間の経過措置

軽減税率の導入は平成29年4月1日ですが、「適格請求書等保存方式」は平成33年4月1日から。
(「適格請求書発行事業者登録制度」の整備に時間がかかるからでしょう)

「適格請求書等保存方式」のスタートまでには5年の猶予があるのですが、それまでどうするかというと、「登録番号の記載」だけを除いて
適格請求書等保存方式」で求められる様式の請求書の発行と帳簿記入を行うということになります。

つまり、

 

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こうなります。

 

 

まとめ

消費税の税率引き上げと同時に導入される軽減税率については、
「適格請求書等保存方式」に対応した「請求書の様式」の「帳簿の記入」が求められます。
また、しばらく先になりますが「適格請求書発行事業者登録制度」への登録も必要です。

おまけ

「適格請求書等保存方式」の実務上のポイントの1つは、
請求書上で軽減税率部分と通常税率の部分をどのように分けるかです。
現場での取り扱いが混乱しないように、請求書の様式を決める必要があります。

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